【ネタバレ注意】世界で一番かわいそうな私たちのあらすじと感想

【ネタバレ注意】世界で一番かわいそうな私たちのあらすじと感想

以前無料版を紹介した綾崎隼さんの新刊『世界で一番かわいそうな私たち』を読んだら面白かったので、そのあらすじとか感想をまとめていきます。

『指示に従っていただければ、私は誰も傷つけません』

その言葉を信じてハイジャック犯のいう通りに行動した当時8歳の少女・三好詠葉。実際、犯人は誰も傷つけず事件は犯人不明のままではあるものの、人質全員解放で無事解決。しかし、彼女は事件後思わぬ落とし穴に気がつくことになる。

というストーリー。ここから先はもろにネタバレがあるので未読の方はご注意ください。

ネタバレありあらすじ1:静鈴荘というフリースクールが舞台

事件後学校で詠葉を待ち受けていたのは、犯人の手先ではないか?という誹謗中傷。矛先となったのは唯一目隠しされていなかった詠葉と運転手。

詠葉は声を喪い、運転手は辞職。声を喪った詠葉がそのまま高校生になってフリースクールに通っています。

そこは、同じく被害者である小説家・舞原詩季(27)の経営するスクールであり、詠葉は彼の発表した『残夏の悲鳴』という本に救われたため、このスクールを選択。

静鈴荘は同じく様々な事情を持つ児童たちが暮らしています。

そんな静鈴荘では、主に舞原詩季の妻である舞原杏(25)が切り盛りしており、本書ではその静鈴荘の敷地前の生け垣に生き倒れの若者・佐伯道成が現れ、杏先生によって拾われるところから物語がスタート。

世界で一番かわいそうな私たち第1巻は「入れ子構造」で二度楽しめる!

第1巻では、プロローグは詠葉の話で始まるものの、中盤の本筋はこの静鈴荘に新たに訪れた高校生・島田裕貴についての話がメインとなります。

彼はイケメンで人当たりもよく、いじめられるようなタイプには見えない。

しかし、元いた高校を辞めてフリースクールに通うことになったという。

フリースクールへの入学を決めた理由として「親の決めたレールを辿るのが嫌になった」と言ってはいるものの、親の決めたスクールに通っているなどイマイチ本音が見えない。

とりあえず静鈴荘に通うことになるも、人間性に問題があるようにも見えないし、辞めた高校の友人たちも続々と彼を連れ戻しにやってくる。

ただ、深い話を聞いてみると、そこには親友の戸川龍之介との間のいじめか思い込みかが微妙なミステリーがあることがわかる。

「教師って探偵みたいですね」

と静鈴荘の前で行き倒れになっていた新教師・佐伯道成はいい、彼はこの謎を解き明かすために奔走します。

生徒と教師と探偵との関係性!

ここからはマジのネタバレになりますが、オチとして悪意の根源は裕貴らの教師であることがわかります。

私情を挟み生徒を退学に追い込んだという教師にあるまじき行為に憤り、罪の糾弾をしようとする佐伯に対し、静鈴荘の実質的ボスである舞原杏はクギを刺す。

「教師は探偵ほど単純な仕事ではありません」

同じく彼女に相談していた裕貴らは、敢えて教師を糾弾しない選択を決定する。

…教師は探偵みたいというのは面白い視点だなと思いました。生徒が何を考えているか、とかトラブルが起きたときの経緯とか、そう言った探偵的な仕事ができない教師は、たしかに動画で授業流すだけのAIとあんまり変わらなそうだなとも思いました。

「犯人は知っているが、敢えてここでは言わない。ただ、次はない」

と龍之介が宣言し、高校に戻ることのできた裕貴。

これにて一件落着かと思ったら、ここからが本題に。

謎解き後のエピローグが次巻への引き

本書の面白いところはこの裕貴関連の事件が終わってほっと一息ついたあとのエピローグの部分。

ここで手が止まらなくなります。

流れとしては、事件が無事解決した翌日、佐伯は杏先生に飲みに誘われます。

そこで、軽く雑談をするような調子で、静鈴荘の前で行き倒れていたところを杏先生に拾われ、静鈴荘の教師となった佐伯がついていた嘘が、次々と明かされていくのです。

初めから全て知った上で手のひらで踊らされていただけという杏先生の圧倒的なマウントになすすべもない佐伯先生。

教師は探偵ほど単純じゃない、というけども、ただ単に教師(探偵)としての格が違うだけなのでは?という疑念も生まれる。

「佐伯道成さん、あなたが瀬戸内バスジャック事件の犯人ですね」

そして、最後に1行とどめを刺したところで第1巻は終了。2巻に続く!

…アツすぎかよ!

終わりに

自分はけっこう伏線とか忘れるタイプなので、そういえばバスジャック事件触れられてないなーとかは思わず、ふつうに第1巻の内容を楽しんだ上でさらに「おおーそういえばその話どうなったんだ?」と2度楽しめました。

心理描写の繊細さとか、淡々としつつも読みやすい文章とか、作り込まれたプロットとか、全体としてかなり楽しめました!

個人的にいま次回が最も楽しみな作品。オススメです。