食料問題を考える本のまとめ書評

  • 2018.07.15
食料問題を考える本のまとめ書評

知り合いのドイツ人でベジタリアンな人がいました。その人に、なぜ野菜しか食べないのかと尋ねたところ、「エネルギー問題に関心があり、食卓に上がるまでにより多くのエネルギーを必要とする肉類は食べず、より少ないエネルギーで作れる野菜しかたべないのだ」と言われました。

日本ではあまり一般的ではない考え方で、かつドイツというとソーセージが有名な国だと思っていたこともあり、自分は結構衝撃を受けました。

これは一例ですが、肉食か草食か、外国産か国産かなど、食事に関しては様々な考え方があります。

そこで今日は、私たちの身近にある食事について考えることのできる本をまとめました。

フードマイレージという考え方

まずは、食料が食卓に運ばれるまでの距離という切り口で食事を考えていく「フートマイレージ」という考え方に関する本を紹介します。

フードマイレージとは、イギリスのティム・ラング教授が提唱した考え方で、

フードマイレージ=食べ物の重さ×運んだ距離

となります。

この考え方の肝となるのは、輸送距離が長くなると、それだけ二酸化炭素の排出量が多くなるということです。

なので、なるべく生産地と消費地を近くしましょう、というのがフードマイレージの趣旨となります。

ちなみに、日本や韓国はフードマイレージがずば抜けて高いそうです。確かに、アメリカ、オーストラリアあたりからだとかなり距離がありますね。

で、そんなフードマイレージについて学べる本がこちらの1冊。


楽天:フード・マイレージ 新版 あなたの食が地球を変える [ 中田哲也 ]

従来の食生活の抱える3つの課題と、それを解決するためのフードマイレージの利点などについて書かれています。

フードマイレージを下げていきたい人にオススメです。

古来種か外来種かについて

そしてそのフードマイレージを突き詰めていくと、日本ではやはり日本で生産した食材を食べるのが最も効率的ということになっていきます。

バナナ、パイナップルなどの熱帯産の作物などは日本で育てることが難しいこともありますが(沖縄などの亜熱帯地域はいける)、実はそれ以外の野菜についても、外来産のものと古来から日本で育てられていた種があります。

この元々日本で育てられていた種のことを在来種(古来種)といい、逆に海外から導入された種を外来種といいます。

在来種は、ある土地で長年栽培されその土地の気候に適応しているため。土壌からミネラルを吸収する力、ビタミンを合成する力が強いものが多いのが特徴です。在来種の数は多く江戸時代には大根だけで200種の在来種があったそうですね。

なので、結果として在来種のほうが病気に強く、肥料なしでも栄養のある野菜に育ちやすいのだといいます。


古来種野菜を食べてください。

アグリバイオの繰り出すF1種とは

では、逆に外来種が良くないといわれる原因はどこにあるのか。

外来種であるというだけであれば、特に問題はない食材も多いです。現地で作ったものを運んでくるのであれば実質的に、現地の古来種を食べているのと変わらないし、日本では育てられないような野菜などを食べることもできます。

問題となりやすいのは、遺伝子非組み換えにより自殺遺伝子をあらかじめ組み込んだF1種と呼ばれる野菜たちです。このF1種ですが以下のような特性があると『種子法廃止でどうなる? 種子と品種の歴史と未来』の著者は言います。

「栽培品種を掛け合わせると、雑種第一世代(f1)には両親より生育が旺盛で収量が増大するなど優れた形質が出る。これを利用するのが雑種強勢育種法。ただ第二世代以降はこれがないので、両親にあたる純系を持っていれば、独占的販売が可能となる。」

雑種が親よりも強くなるのは掛け合わした第一世代だけで、その後は両親の劣性遺伝子が発現するのであまり収益が上がらないそうです。

このF1種は肥料から栄養を吸収する前提で作られており、窒素分の高い野菜となってしまうことや、繁殖能力のないものも多く2世代目以降が栽培できず、毎年アグリバイオ企業からタネを飼わねばならない点などが問題となっています。

主要な種の安定的供給を定めていた種手法が廃止されたことで、この外来種としてのF1種がさらに増えるのではないかと懸念されています。


種子法廃止でどうなる?: 種子と品種の歴史と未来 (農文協ブックレット)

メジャー種かマイナー種か

そもそも人が食べる穀物については、主要な12種類でその大半を占められています。

これらの植物は、収量が多く、使い勝手もよいため、アグリバイオ企業などにより大量生産されています。

しかし、これらの種に頼りきりになることは、同時多発的な病原菌や害虫が発生した場合などに対し、リスクとなります。

そこで、収量の少ないマイナーな種についても、作物絶滅の危機を助けていくべきではないのか、という議論をまとめたのがこちらの1冊『世界からバナナがなくなるまえに: 食糧危機に立ち向かう科学者たち』。

バナナが主要な作物ではないというのは正直驚きでしたが、バナナが消えると個人的には結構影響を受けるので、このタイトルは衝撃的でした。

食の多様性について考えたい人にオススメです。


世界からバナナがなくなるまえに: 食糧危機に立ち向かう科学者たち

肉食に正義はあるか

ここまでは主に植物の話でした。ここからは主に肉の話をしていこうと思います。

まずは、近年の牛や豚などの家畜の育て方が動物虐待に当たるのではないかと議論するこちらの1冊『動物の権利入門』から。

この本では、「人々は動物たちに不必要な苦しみを与えるは間違っていると認めるが、その一方で、何ら必要性を伴わない目的のために、ほとんど想像すら不可能な数の動物たちに死と苦しみを与える。」と、動物の権利保護観点で、一般に信念と実際の扱いの間に隔たりがあるのが現状を指摘します。

本書を読むと、豚の8割は屠殺時に肺炎を患っていること、檻での生活や輸送により鶏の大半も骨折してしまうなど劣悪な飼育環境があることや、人間の健康には動物性たんぱく質は実は必要ないことなどがわかり、肉食中心の価値観が揺らぎます。

動物を差別するのは、人種差別や性差別と同様道徳的でないという主張はもしかしたら将来はスタンダードな考え方になるのかもしれませんね。


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ハラルメニューをめぐる議論

動物を食べるかどうかという議論の中には、ある特定の種類の動物だけを食べないというタイプの議論もあり、有名なところとしては、イスラム教のハラールメニューなどがあります。

イスラム教徒の中でもどこまでハラールを厳密にとらえるかには差があり、一般に東南アジア系の人はかなり厳密で、中東系の人は日本への旅行時などはゆるやかであるそうです。

その辺のハラールメニューに関する議論をQ&Aでまとめたのがこちらの1冊。

イスラム教の戒律のポイントや、ムスリムの観光地として発展するために必要な制度などについて書かれています。


Q&A ハラールを知る101問: ムスリムおもてなしガイド

人を食べてはいけないのはなぜか

最後は食べるという行為全般を議論した『食べることの哲学』という本を紹介します。

この本では、食べることに関するタブーについて議論しているのが特徴です。

例えば、なぜ人間の肉を食べてはいけないのか、もし他人の肉を食べた場合どんな罪に問われるのか、などが議論されます。実際、殺人や傷害もなく、合意の上で他人の肉を食べた場合は罰する法律はないそうですね。

ただ、文化的な背景から何らかの理由を付けて逮捕されることが多いそうです。

他にもアンパンマン、注文の多い料理店など食に関する童話やアニメを引用しつつ考察してあり、哲学的な議論でありつつも読みやすいのが本書の魅力だと思います。

食の哲学的意味を考えたい人にオススメ。


食べることの哲学 (教養みらい選書)

終わりに

食べるということについて議論する本をまとめました。

普段何気なく行っている食事ですが、考え出すと様々な議論があることがわかります。

食に感謝するという風習がある地域や宗教も多いですが、この飽食の時代に今一度食について考えてみることが大切なのかもしれませんね。